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エリュシオンでささやいて
第4章 Bittersweet Voice
 
 
 コード進行はそのままだけれど、突然変わったリズム。
 第三者からは、そういう予定だったとしか思えない絶妙なベースのリズムで、裕貴くんの歌声は少しぶれた……と思いきや、ギターでそのリズムでのアレンジをしながら、歌声を支え始めた。

 どんな予定外の出来事も即座に対応出来る音楽性。
 乱れないリズム感。

 これは――女帝の弟が叩きたくなるのもわかる。

 やばい。
 本気にやばい。

 ……興奮してきた。

 ベースとギターが凄まじいテクを見せるのなら、ねぇあたしもいい?
 置いてきぼりのシンセは寂しくて。

 ねぇ、あたしの旋律で参加していい?
 ちょっとだけ、あたしも仲間に入れさせて。

 ゆっくりと動ける指を動かすと、ベースとギターが緩やかな旋律となった。

 目立たせないでと焦っても、あたしがやろうとしていることを汲み取ってくれたふたりのおかげで、あたしは動き出した指を長い間、動かさないといけなくなった。

 早瀬が設定していない真ん中の鍵盤で、あたしの心に浮かぶメロディーをそろそろと弾き、動かない右手の小指の代わりに左手を使うという、クラシックではナンセンスな指運び。

 だけど楽しくて。
 ちょっと間違えてしまったけれど、あたしのソロをふたりが飾ってくれたのが嬉しくて。

 ……あたしも弾けたよ。
 あたしの音が出せたよ。

 そう思うと、感慨深くて泣けてくる。
 泣いてばかりいるあたし、凄い顔になっているだろう。

 頷いてピアノソロとも言えないゆっくりだった旋律は終了。

 裕貴くんのソロの時は、お返しに派手に飾って上げたいと、両手で早瀬が打ち込んだふたつの鍵盤の同じコードを押せば、また違う顔の音色が派手に広がって。

 負けじと弾かれるギターソロは、汗が飛び散っているかのような速さと凄絶なテクニックを見せて、これは早瀬でも真似出来ないんじゃないかなと思えば、今度は早瀬が無理矢理ベースソロを割り込んでくる。

 あたしはきっちりコードを奏でていなければ曲が消えてしまうため、ベースの代わりに、ストリングスが入ったピアノ音でコードを構成する三音を、次々に押していく。

 裕貴くんに負けないテクニックを披露するりすと、楽しそうに挑発を受ける裕貴くんと、あせあせしながらコードを守っていくうさぎと。
 
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