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エリュシオンでささやいて
第4章 Bittersweet Voice
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早瀬の制裁により、表彰に異議を唱える者はいなくなり、表彰式は無事につつがなく終わった。
解散となった時、早瀬は瀬田さんに頭を下げ、そして瀬田さんも笑いながら早瀬の肩を叩いているのを見た。その時柔らかく笑った早瀬の表情から、早瀬は瀬田さんという存在を全面的に信頼しているように思えた。
ああやって、笑えるんだ。
あたしは早瀬が今の地位に至るまでどうであったかなど知らないが、もしかして駆け出しの早瀬を支えたのは瀬田さんなのかもしれない。
「あのりすが、早瀬須王。早瀬りすが、り…すおう……」
ぶちぶちといまだ現実逃避している裕貴くんの背を押しながら、彼を認めた早瀬の方に引き渡せば、うさぎの役目はおしまいだ。
さすがに熱さに息苦しくなって、頭を取ろうとしたけれど、化粧崩れが気になってやめた。
色々と気になるお年頃です。
「あ、あああ……ありがとうございました!!」
人が散り始めている会場で、裕貴くんの澄んだ声が響き渡る。
「お、俺、知らなくて……知らなくて、色々その……っ、助けて貰って」
完全にテンパっている裕貴くん。
ぶっつけ本番と言っても過言ではないステージで、あんなに堂々としていたというのに、まるで恋する少女のようにもじもじしている。
「本当に、尊敬してたんだ?」
あたしが訊くと、熟れたトマトのように顔を真っ赤にさせた裕貴くんが、こくりと頷いた。
「……早瀬須王に憧れて、ギターを始めたんだ。俺、彼の曲ならなんでも答えて弾けるくらい、何百回と練習してきて……」
さらにぽっと赤くなる。
「こんな近くで生を見れただけでも、俺……死んじゃいそう」
それを見てあたしも、早瀬と瀬田さんは愉快そうに笑う。