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エリュシオンでささやいて
第4章 Bittersweet Voice
「いいか、早瀬くん。きみはどんな理由があっても、三芳社長に恥をかかせた。この仕打ちに、体面だけを気にする三芳社長は黙っていないだろう。確かきみは、今のプロジェクトにMSミュージックをスポンサーにつけていたはずだ」
……そうだ。
やばくない? HADESプロジェクト。
あの社長ならキレて、スポンサーを降りると言うかもしれない。
プロジェクトは資金があって潤滑に進めるもの。
早瀬だからスポンサーは見つかるだろうが、かなり大々的なプロジェクトを支援してくれるひとがすぐに見つかるかどうかはわからない。
「MSミュージックが降りたら、どうするつもりだ」
「……その時は、その時です。どうせボーカルに、息子を入れるつもりでプロジェクトを推していましたから、切るのはいい機会です」
あまり早瀬は気にしていないようだ。
「ふむ。きみがその覚悟で切ったのならいいがね、それによっての悪影響を、きみは会社の一員として考えていなければならない」
確かに、MSミュージックが抜けるとエリュシオンは痛手を被るかもしれない。HADESプロジェクトに限らず、MSミュージックの支援が、早瀬に対する賄賂のような意味合いがあったのなら。
「損害が出れば、俺が働けばいいだけです」
やはり早瀬は動じていない。
確かに早瀬が動けば多大な金は動くだろうが、
「今ですらスケジュールが大変なんでしょう?」
そう語ったのは、早瀬本人だ。
「なんとかなる。……今までのペースを崩さずにな」
……ホテルで過ごす時間を減らせばいいと思ったあたしに、そうはさせないというような、早瀬の強い眼差し。
「だけど……」
「いいんだよ、〝それ〟は」
よくないでしょう、それは。
「お、俺のせいで……」
裕貴くんは目に涙を浮かべて、今にも泣き出しそうだ。
早瀬は笑って、裕貴くんの額に指を伸ばしてデコピンをする。
「お前のせいじゃねぇよ。俺のプロジェクトは、俺が最後まで責任を持つ。なにがあっても俺のペースは崩さねぇ。俺を誰だと思ってるんだ?」
「りす王さま……」
「だから、『り』は余計だって!」