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エリュシオンでささやいて
第4章 Bittersweet Voice
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観覧車があることで予想をしていなかったわけではないけれど、なんで横浜の都市型の建物が多い場所に、遊園地があるのよと思わずにいられない「よこはまコスモワールド」。
しかもなぜに、退社時間過ぎても夜まで営業しているのかよくわからない遊園地に、早瀬は連れてきた。
遊園地らしきアトラクションで遊んだのは、旧エリュシオンの慰安旅行で、鎌倉の近くのプールを併設した温泉施設に行ったっきり。
あの時にペアを組まされた、同期の男性社員が、あたしを浮き輪から落としたことに気づかず、そのままひとり滑り落ちてしまったため、遅れて全身で滑って降りてきたあたしは、ウォータースライダーが恐ろしく怖くて……トラウマのようになったまま数年。
きっともう絶叫系は駄目だと思うと言うと、早瀬はあたしを、どう見てもジェットコースター以外の何ものにも見えないアトラクションに、あたしを連れたのだ。
「あたし、絶叫系のアトラクションが怖いと、話しましたよね!?」
「ああ。お前が他の男と、密着して遊ぼうとしたツケだな。その男で終わる記憶は書き換えなきゃいけねぇ」
「は!?」
カタカタと、嫌な音をたてて上に上っていく。
「な、なんで夜にジェットコースター乗らないといけないんですか!」
「なに、こんな程度も怖いわけ?」
この上から目線に、カチンと来る。
「怖くないですよ、あたし絶対怖くは……うぎゃあああああ!!」
走る、上る、下る。
しかも最後は、水辺に向かってトボン!!
水飛沫があがって、うわあ……と思った瞬間に、水飛沫はすでになくなっていて。
ハテナマークを出したまま終了。
「お前、鼻水出てるぞ」
笑いながら指摘する早瀬は、なんと手であたしの鼻を摘まんで鼻水を拭ってきたから、その羞恥にあたしは我に返って。
「手、まず手を拭きましょう!」
バッグから取り出したティッシュで鼻をかみながら、早瀬の偉大なる指をふきふきする。