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エリュシオンでささやいて
第4章 Bittersweet Voice
「優しいだろ?」
「鬼畜「揺らすか?」」
あたしはふるふると頭を横に振った。
「とりあえずそこにそうやって座っているのはよせ。他の客に誤解される」
「誤解?」
「ああ。フェラしているようだから」
「△◎◇○※〒!!」
ポカポカと拳で早瀬を叩く。
「あははははは!!」
もう本当に憎たらしくて仕方がない。
本気でぐーでぽかぽかと叩いているのに、早瀬は余裕顔で笑いながら、手のひらで受け止めた。大きな手のひらであたしのぐーを包んだまま、引っ張り上げるようにして、早瀬の横に椅子に正しくお座り。
こんなに簡単にできるなら、入った時からそうやってくれればよかったのにと、あたしは内心ぶちぶちと文句を言う。
「俺さ、観覧車って初めてなんだ」
片手であたしの腰を引き寄せ、そのまま景色を見下ろすように促される。
改めて見下ろすと、宝石を散りばめたような夜景を見下ろしていることに感動したりする。
「実は遊園地に来るのも初めてで。正直言うと、レジャー施設は行ったことがねぇんだ」
「えええ!? 色々なところ知っていると思ってました。女のひと、連れて」
早瀬は顔をあたしに向けて、苦笑する。
「だからさ、いねぇってそんな女。わかるだろう、俺が女慣れしてねぇの」
「まるでわかりませんけど」
眼鏡の奥の早瀬の目が不機嫌そうに細められた。
「本当にいねぇんだよ、そういった女は」
胡乱な目で見たから、額にデコピンされた。
「いねぇから、昔から夢ばかり見ていた。もし彼女が出来たら、普通の高校生のようなデートをしたい。あそこに行ってこうやって演出して、と。……思えば、プロデュース業に魅力を感じたのは、このせいかもしれねぇな。夢を叶えたいと色々情報収集して、俺なりにプラン考えて」
だったら――、九年前にキスをしていた女性はなんだったの?