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エリュシオンでささやいて
第4章 Bittersweet Voice
「……柚」
早瀬に後ろから荒々しく抱きしめられて、あたしの心臓が壊れたと思うくらいけたたましく鳴り響いた。
早瀬が、耳元で囁く。
「俺、キス……していいの?」
あたしを頭を横に振る。
「じゃあなんで、そんなに可愛い反応をするの?」
「可愛くなんて……」
「顔、見せて」
「やだ」
「やだと言えるのに、キスはいいんだ?」
あたしだってわからないよ。
あたしだって、訊きたいよ。
どうして、拒まなかったの?
「柚」
耳殻の溝を舌先でなぞられ、穴の中に忍び込まれて。
ひゃあというおかしな声を止めることが出来なくて。
「もっとキスしたい」
「や……めて」
ねっとりと舌で耳をなぶりながら、熱い息と共にハスキーなものへと変わる声を、直接鼓膜に吹き込んでくる。
背筋がぞわぞわとして、ぶるりと身震いしてしまう。
「お前を抱きたい」
この声は、早瀬の欲情した音色。
「やめ……てっ」
同時に、開拓されたあたしの身体も、熱く濡れてしまうんだ。
「柚、たまらねぇんだよ。お前を喜ばせるために遊園地来たのに、どうしてお前が俺を喜ばすんだよ」
「喜ばせてなんか……っ」
「柚、お前の中に入りたい」
ストレートに求められて、身体がカッと熱くなる。
「やだ……」
受け入れたいと、下腹部がきゅんきゅん疼く。
こんな、意志とは無関係に反応する浅ましい身体なんて嫌なのに、早瀬を知る身体は反応してしまうんだ。
「お前の声が聞きたい。お前で満たされたい――」
ぐぅぅぅぅぅ。
「………」
「………」
きゅるるる。
「………」
「………」
ぎゅるるる、きゅる。
「……俺の誘いをものともしねぇ、随分と盛大だな、お前の腹の虫」
「……黙って下さい」
「ちくしょ……邪魔された」
早瀬は、あたしの頭上で顎をぐりぐりとすると言った。
「せっかくだから、美味しいもの、食おうぜ」
「………」
「おごらせてくれ」
「嫌だと言ったら?」
「却下。連れて行く。……連れて行きたい。まだ離したくねぇ」
……腹の虫は助けてくれたのか、どん底に突き落とすためなのか、よくわからなかったけれど、腹の虫が鳴いてくれたおかげで、あたしはこの上ない空腹を感じて、くたりとなった。