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エリュシオンでささやいて
第4章 Bittersweet Voice
 

「どうしてくれるんだよ、俺の服!」

 優しく声をかけてきたのに、男が怒り狂ってる。

「ごめんなさい、ごめ……っ」

 また吐いてしまった。

「汚ねぇ、このゲロ吐き女!!」

 そう言った男の腹に、早瀬は拳を入れた。

「好き好んで吐いてるわけねぇだろ!? ヤることしか考えてねぇで、少しは介抱しようとか思わねぇのか!」

 そして早瀬は、適当にボタンを押して外に出ると、ドアが閉まった。
 騒ぐ男と吐瀉物を乗せて、エレベーターは下に行ってしまったらしい。

 自己嫌悪と吐き気とで、頭が痛かった。
 
 早瀬が手にしていたコートをぐるぐると丸めてあたしの手に握らせる。

「これに吐け。今、水貰ってくるから、その間はこれで我慢してくれ」

「いや、そんな……服……」

 すると早瀬は目をつり上げ、声を荒げた。

「服なんかどうでもいいだろう!? 我慢するな」

「でも……早瀬を汚したくない……」

 すると早瀬は腰を屈めるようにして、吐いたばかりのあたしの唇に、彼の唇を重ねたのだった。

「ちょ、なっ!!」

 キス、しかも吐いたばかりの唇なのに!

「俺は大丈夫なの。だから安心して、ちょっと我慢して待っていてくれよ」

 汚いのに。
 スポットライト浴びたばかりのひとがすることじゃないのに。

 あたしは早瀬を置いて帰ろうとした。
 コートを手にしていたということは、1度席に戻ったのだから、彼は伝言を聞いたはずなのだ。

 それなのに――。

「とにかく水を飲んで吐いて、酒を薄めていけ」

 女子トイレに一緒に入り、吐くに吐けないあたしの口に指を突っ込んで、便器に嘔吐させていく。

 背中を摩る暖かい手。
 あたしの片手を握りながら、励ましてくれる。

 どうしてそんなことをしてくれるの。

 どうして。
 どうして。

「疲れたか? ちょっと休むか。俺の肩によりかかれ」

 あたしの頭をまさぐる優しい手。

「飲ませて放置して、ごめんな」

 優しすぎて、涙がとまらない。

「どうした? 苦しいのか?」

 あたしは頭を横に振った。
 
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