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エリュシオンでささやいて
第4章 Bittersweet Voice
 

「あたし……帰ろうとしてたの」

「ん、聞いた」

「ごめん……」

 早瀬があたしの額に唇を当てた。

「……謝るな。どうせまた、俺がお前の気分を害したんだろう? ただ……あの男が慌てて出ていったのを見て、ホテルの部屋に連れ込まれると焦ったけど」

「あのひとが気持ち悪くて、それで吐いちゃったの」

「ん……」

 弱っているあたしのコメカミに、早瀬の唇。

「俺は大丈夫?」

「大丈夫」

 早瀬の香りは、吐瀉の匂いが気にならないほど、落ち着くのに。

「汚してしまって、手間かけさせて……ごめんなさい」

「いいんだよ」

「演奏素敵だったのに、あたし帰ろうとして……っ」

「だからいいんだって。……こうしてお前が俺の腕の中にいれば、逃げようとしていないのなら、不問だ」

 優しくされればされるほど、あたしの中で吐き気とは別に込み上げるものがあって。

 それが涙と共に外に出た。

「あたしを、嫌わないでっ!!」

 ……そう、早瀬に嫌われたくないのだ。

 あの男みたいに、汚い女だと手間のかかる女だと、嫌われたくない。

「嫌わない」

「本当に!?」

「疑り深い奴だな」

 あたしの唇は、苦笑する早瀬の唇に塞がれた。

「嫌いな女に、こんなことしねぇから」

「……っ」

「……今日、お前帰るのは無理だ。だから今夜はここに泊まろう。……変な意味じゃなく」

 心配そうなその瞳に絆されて、あたしはこくりと頷いた。

「うん……」

 早瀬はあの男とは違う。

 ……あたし今夜、早瀬から離れたくない。

「良い子だ」

 早瀬は、あたしの頭の上に口づけた。 

 
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