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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
早瀬がちゅぱっと音をたてて唇を離し、あたしの耳を甘噛みした。
「だから俺、神様じゃねぇんだって。こんなことされてるとマジに我慢できなくなるから」
欲情した時のようなハスキーな声で、耳に囁かれて。
早瀬は、あたしの手ごとあたしの片足をぐっと持ち上げて。あたしの中に入りたいというように、足の付け根に彼のをぐっぐっと押しつける。
「こうやって、挿りたくなるから……俺を有言不実行にさせねぇで?」
もどかしくてたまらない。
もうこんな状態なら、煮るなり焼くなり好きにしてくれればいいのに。
「……やべ、墓穴。……ちょっと待て」
なにやら慌てるようにしてしばらく項垂れるて深呼吸をしていた早瀬は、やがて顔を上げるとあたしを恨めしそうに睨み付ける。
どんな眼差しだろうと、艶めいていて。
どこまでも優しくて……調子が狂う。
「生理終わるの一週間だよな。だったら来週の金曜日、抱くぞ。こうやってお前の顔を見ながら、たくさん繋がるからな」
「……っ」
「ちゃんと俺の名前呼んで、声抑えずに啼けよ、これからは」
「……何気にハードルが上がってる気がするけど」
朝の光でさらに魅惑的な美貌をひけらかすこの男を、まともに見れなくて顔を背けたら、
「上がってねぇよ。……いい加減、俺に慣れていけよ、お前」
ぶっきらぼうに呟いた早瀬は、あたしの顎を掴んで、リップ音をたてたキスをする。
「身体のように、心も俺に慣らせ」
「……っ」
一直線の視線が、あたしの心に刺さる。
「俺はお前を嫌わねぇから。むしろ……」
再びキスされた。
「キスから、感じれよ。俺がどう思っているのか」
あたしの弱さを知り尽くしたような、脳天まで痺れる甘美なキス。
抱きしめられて受けるキスは、極上すぎて。
それが早瀬の思いなのだとしたら、あたしはまた、勘違いしてしまう。
あたしを好きなの?
そう聞ければどんなに楽か。
だけど、早瀬への想いを自覚してしまった今、その返答が怖い。
処女でなくなったあたしに、九年前の言葉をぶつけられるのは怖い。
簡単に落ちないゆえに特別な、ただの性処理だと言われたら――。
捨てられるのが怖い。
また見向きもされなくなってしまうのが、怖い。
愛されていると錯覚する甘美なキスに、……泣きたくなった。