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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
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「裕貴はHADESプロジェクトのボーカルには使わねぇよ。あいつは別件でのプロデュースだ」
本日は快晴。
東京に向かった走る車の中で、眼鏡姿の早瀬はそんなことを言い出した。
「だとしたら、やはりふたり探さないといけないんですか?」
「ああ、勿論。本当は俺はひとりのプロデュースを発案していたんだが、三芳の親父がツインボーカルを主張して、ふたりになった。恐らく今後、遅かれ早かれMSミュージックは手を引くだろうから、そうなればひとりで行くのもいいと思っている。とりあえず、裕貴はボーカルだけに固執させたくねぇ。あいつのセンスはトータルで伸ばしたい」
裕貴くんは、その音楽才能を随分と早瀬に買われているようだ。
知ったら喜ぶだろうな。
「どこか寄りたいところあるか? 服でも見に「服!!」」
あたしは飛び上がった。
「すみませんが、途中で適当な駅で降ろして下さい」
「どうした?」
「家で服着替えて来ます」
「クリーニング、甘いのか?」
「いえ、そうじゃなく……昨日と同じ服だと色々と言われるので。しかもあなたも同じ服着て、揃って午後出社なんてなにを言われるか……」
新品のようにクリーニングされた服でも、昨日の服はなにかと噂されてしまうお年頃。さらに言えば、クリーニングしているとはいえ、あたしの吐瀉物がついた服をふたりで着て出社なんて、どんな羞恥プレイだ。
「別にいいじゃねぇか。どの服を着ようが俺達の勝手だ。火事で服が燃えましたと言えばいい」
「嫌ですって。どうして嘘をつかなきゃならないんですか」
「だったら本当のことを言えばいい。俺とホテルに居たって」
具合悪くなったことを抜かす事実は、あまりに酷い。
「あたし、女帝に踏みつけられそう」
ため息交じりに言うと、それを早瀬が笑い飛ばした。
「ああ、まさしくそんな感じだものな。土の中にお前埋めて、出て来ようものなら足で、モグラ叩きか」
「そこは否定して下さいよ、それに女帝に失礼ですよ」