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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
 
 
「お前、あいつを貶しているのか擁護しているのか、どっちだ?」

 早瀬は口元で笑う。

「女帝の気持ち、わかっているんでしょう?」

「ん……告られたからな」

 早瀬はフロントガラスに顔を向けたまま、そう返答した。

 ……告ったんだ。
 その上で頑張っているんだ。

「女帝……、レベル高いと思いますけど、受け入れなかったんですか?」

「ああ。受付兼秘書としては優秀だけど、プライベートでも会いたいとは思わねぇし。はっきりいえば、どうでもいいんだ。三芳も他の女も」

 他の女……あたしもそうか。

「女の子は、その気もないのに優しくされたら勘違いしちゃう生き物ですよ」

 自分のことを言っているようで、鼻の奥がつーんと痛くなる。

「別に三芳に優しくしている覚えねぇぞ。とりあえず組織の一員として、どんなにうざったくても女には、一応は畑で育ててるナスとカボチャと思うようにしてる」

「なんですか、それ」

「俺、媚び売ってくる、あからさまな女は苦手なんだよ。濃い化粧で上目遣いをされた時にゃ、その面に水ぶっかけたくなる」

「……ひど」

「だから苦手なんだって。女の機嫌伺うのなんてまっぴらだ」

「モテる男は違いますね、言うことが」

「……俺の母親がそういう女だったからな。この世で二番目に最悪だった。おかげさまで、女不信さ。見返り求められると、ざわっとする。無償でなにかされると、疑っちまう」

 初めて聞いた話だった。
 
「だったら一番目の最悪は誰なんですか?」

「ん……」

 ……曖昧に誤魔化されたようだ。

 早瀬はなにか特別な過去や環境があるのだろうか。
 シングルマザーのお母さんと確執があったの?
 
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