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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
 

「本当に、なんとかならないかしら、あのエロい生き物」

 キスをしてから、さらに誘惑めいた強い色香が出ている気がする。
 
「顔が青いなんて……またひとを病人にさせて、そんなことを……」

 ……だけどなにかお腹が痛い気がして。
 慌てて自宅でトイレに行くと、案の定、女の子の日の開始。

 もしかすると早瀬を好きだと思ったのも、生理前だから情緒不安定になっていたために、そう錯覚したのかもしれないと思うと気が楽になる。

 あたしは然程お腹が痛くならない軽い方だけれど、それでも最中の違和感や不快感はあるし、貧血のようになる。

 本人より男が気づくってどうよ、と思いながらも、そんな些細な変化に気づいて貰えたのが嬉しいなんて思って、自己嫌悪に項垂れる。

 鉄分のサプリを飲んでのたのたと着替え終わり、化粧も直して家を出ると、家の前にさっき別れたはずの、もう見慣れてしまった黒い車が停まっている。

 車の外には、無駄に手足が長く、無駄に美しいモデルのような背広姿の男がひとり、流れるようなフォルムが美しい車に寄りかかるようにして立っており、スマホを弄っている。

「え? さっきいなくなったはずじゃ……」

「お前さ、LINE見ろよ」

 早瀬は口を尖らせ、なにかむくれている。

「LINE?」

 まるで見ていなかったスマホを取り出すと、LINE通知がたくさん。

『なに飲む?』

『飲み物』

『おいこら』

『シカトしたらどんな目に遭うと思ってるんだ』

『まじにシカト? それとも具合悪い?』

『意識ちゃんとあるか?』

『今、戻って来た。行くから待ってろよ』

 段々と緊急性を帯びてきて、貧血な身体からさらに血の気が引いた。

 
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