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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
 

「あ、ご、ごめんなさい。心配おかけしましたが、大丈夫です。そ、その……来ちゃったので」

「来た?」

「ええと……女の子の日が」

「ああ……それか。休まなくても大丈夫か?」

 肘を見せるように、首のところに手を置きながら言った。

 照れてるらしい。

「毎月のことなので平気です」

「それはよかった。……が、あと数秒遅けりゃ、お前の家に行ってたぞ」

「よ、よかった、間に合って」

「なに? そんなに俺、入れたくねぇの?」

「はい!」

 女の子の部屋は色々あるのです。
 早瀬だろうが、誰だろうが、あたしの領域にひとを入れたくない。

「アキの写真飾ってるとか?」

 低くなった声に気づかず、あたしは純粋に驚いて。

「亜貴? え、飾ってるの、知ってるんですか?」

 元気になりますようにと、いつも神様にお祈りしていることも?

「ちくしょ……。いいから乗れ! 介護タクシーに思え」

「介護……、でも誰に見られるか……」

「別にいいだろ、見られても」

「え、でも……」

「つーか、いい加減、今更だろう。ほら乗れ。乗らねぇとクラクション鳴らして大騒ぎするぞ」

 慌ててまた助手席に乗り込んだ。

「これ、水。コンビニで無難なの選んできた。水分摂ってろ」

 ……なんでこのひと、不遜なくせして気遣いなんだろう。
 普通に別れたくせに、なんでこんなものを用意しているんだろう。

 あたし、早瀬に親切にされてばかりだ。
 じゃあ、あたしはどうなの?

 好き、嫌い……そんなことばかりじゃなかった?

 またずぅぅぅんと自己嫌悪となる。

「気分悪いか? 病院、行く?」

「い、いえ、大丈夫です。早瀬さん……その、色々とありがとうございます」

「なんだよ、突然。いいんだよ、礼ならまずその言葉遣いやめてくれ。何度も言うように、会社以外では。線引かれているようで嫌なんだよ」

「……わかったわ」

 言葉遣いは、あたしなりの線引きだったんだけれど。

 ……結局早瀬は、そのままの背広で出社した。
 オシャレさんのくせに、あたしが吐いた背広で出社する早瀬に、なんだか心がこそばゆくなりながら。


  
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