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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
「秘密裏に動いていたのに、エリュシオンは完全後手ということか!?」
「そうです」
それはつまり……、
「それだけではなく、HADESプロジェクトに関わる外部の人達が、そちらに行ったようで、既に名前公開されているようです。早瀬さんが集めた演奏者もすべて」
誰かが、情報を漏らしたということ?
誰かが、企画そのものの奪取に、協力したということ!?
「そしてついさっき、MSミュージックの社長が怒鳴り込んできました。HADESプロジェクト情報漏洩によるプロジェクト中止の、違約金を支払えと」
「違約金……社長がか?」
「はい。それをお嬢さんの三芳先輩が抑えて下さっている状況です、今応接室にいますけど」
あたしは早瀬と顔を見合わせた。
なにかおかしい。
スポンサー撤退なら一文の得にもならないが、ちょうどタイミングよく、違約金発生する事態が起きたこと――。
あの社長はなにかしてくると思ったからこそ、被害者となりながら利益があることが、出来すぎている気がする。
しかも今日は、仏滅だよ。
家のカレンダーで生理の開始日をつけた時、あたしは見ていたの。
あたしの元同僚は、そういうのを気にして験担ぎをしていたひとが居たの。
だから――。
「ありえない……」
早急にHADES誕生となったとしか。
オリンピアは、前社長の崇高な音楽精神を受け継ごうとしたから、営利目的の現社長に反抗して、外に会社を作って独立したんだ。
HADESをパクって世に出した時点で、彼らは社長の主義に反する。
さらに三芳社長の賄賂で動く連中?
オリンピアは変わったの?
オリンピアが早急に動いたというのなら、動かしたのは誰?
本当に三芳社長なの?
あたしは、スパイというよりも、オリンピアの影になにかを感じずにはいられなかった。
それは直感にほぼ等しい。
「上原、どうした」
「オリンピアの独断ではない気がします。かといって、彼にしてはそれでオリンピアが動くとも思えない。だけど買収にしても関係者全員だと言うのなら、あまりに早急で金がかかりすぎている。彼がそのリスクを決断出来るかどうか」
彼とは、無論三芳社長のことだ。
あたしの言葉を、早瀬はすぐに理解したらしい。
さすが頭のいい男は、頭の回転も速い。