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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
「つまり、第三者がいるということか?」
「勘ですけど。オリンピアらしくない」
早瀬は険しく目を細め、なにかを考え込む。
「案外、上原先輩が情報流したんじゃないですか? 皆、そう噂してますよ。エリュシオンに敵意を持ってオリンピアに顔が利くのは、先輩しかいませんから」
顔が利く?
裏切り者だと罵られたのに。
「あたしはそんなことしない!」
「まあ、口ではなんとでも言えますけど」
「いや、上原はプロジェクトの全貌を聞いていないから、流せる情報はねぇんだ。俺が演奏者のリストを上げたのも、上層部だけだ。しかもボーカルも決まってねぇのに、この状況で向こうが間に合わせのボーカル連れた意味がねぇ。今月末まで待ってりゃいいんだから。……谷口、プロジェクトメンバーに号令をかけろ」
「あ、もう二階の会議室で緊急会議開いてます」
早瀬は駆けるようにして階段を上がった。
「そうか、内容は知らされてなかったんですね。信頼されてないんですね、可哀想。案外それで早瀬さんの気を引くために、出かけるふりをして早瀬さんと寝て、そこから情報を聞き出した……」
「美保ちゃん、あたしオリンピアに行ってくるから」
あたしは美保ちゃんの戯言を聞いている余裕もなく、タクシーを拾って青山にあるオリンピアに向かった。
恐らくあたしからの電話もメールも受け付けないだろう。
あたしの目と耳で真偽を判断するしかない。
早瀬がやろうとしていた音楽をこんな簡単に奪って、音楽を冒涜したのなら、あたしは許せない。
早瀬が作ろうとしていたHADESの蘇生を。
なにがあってこうなったのか、説明と謝罪を。
あたしは怒りに燃えていた。