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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
 
 
「うちの上原が世話になった」

 しかし早瀬も笑った。

 とても眩しく、とてもいい笑顔なのに……なにかどす黒い。

「いえいえ。元々は俺の可愛い部下でしたから、お気になさらず。ええと、早瀬さんは今の上司なんですか、上原さんの」

 早瀬に負けじとキラキラオーラを振りまく朝霞さん。

「上司……そうですね、まあそんな堅苦しい関係ではないですけど。な?」

 堅苦しくない関係ってどんな関係なんだろ。

「な?」

 同意しないのにいらっとしたような早瀬の声に、慌ててぶんぶんと頷いた。

「仲いいね、君たち」

「ええ、おかげさまで」

 だからその笑顔で中身がない会話、やめて欲しいってば。


 ……ざわついた声が聞こえてくる。

「イケメン、目の保養……」
「生早瀬、素敵~」

 周囲はただの野次。
 だけどなんだろう、あたしの目からは笑い会うふたりが怖い。

「では失礼する。HADESの話は、顧問弁護士を通させて貰うことになったのでよろしく」

「うーん、どうしようかな」

 朝霞さんは考えるふりをして笑った。

「そんな面倒なことをしなくても、こちらが取り下げます」

 さすが朝霞さん!!

「ただ……オリンピアの後、そちらがまた同じプロジェクトを公表したら、どんなに裁判沙汰になっても、世間からはイメージ悪くなるでしょうね」

 確かにそうだ。

 盗んだ盗まないと注目度を浴びるのが、真実がどうであっても、悪いイメージにならないとも言い切れない。

「そこでひとつ提案します」

 朝霞さんは微笑んだまま、言った。

「早瀬さん。うちに在籍するといい。早瀬須王あってのHADESなんでしょう? あなたがうちでHADESを作った。そして落ち着いたらエリュシオンに戻り、エリュシオンでHADESを進めればいい」

 オリンピア発、エリュシオン経由……ってこと?
 
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