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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
「あいつにはそこまでのものはない。副会長が狙っているのは、三芳社長の金とコネだろう。音楽界のコネだけはあるそうだからな」
「音楽界のコネがあっても、副会長にメリットになるんですか?」
「昔から音楽界は、財界・経済界・政界と結びつきやすいからな。お偉いさんが抱えている音楽家に取り入れば、そこから力を手にできる」
「そういうものなんですかね。あなたもそうなんですか」
「……さてね」
早瀬は誤魔化した。
「お前の家にも来てただろう? 音楽界のボスの家のようなものなんだから」
あたしは昔を思い出す。
確かに家に、色々とひとが訪れていた。
たまに、あたし達子供の馬になって遊んでくれた背広姿のひとも居たことを思い出せば、もしかして……一種の両親に対する媚びだったのだろうか。
どう見ても、音楽と無縁に見える怖いひとも来ていた。
……別に家族で演奏したわけでもない。
なにを話に来てたんだろう。
「じゃあ朝霞さんは、オリンピアを救ってくれた協会を背負う、三芳社長か副会長に言われて、こんなことをしたと?」
「ああ。それと協会の会長が、別の財閥の名だから、そちらの手がかかっているのかもしれねぇし」
「財閥って、たくさんあるんですね」
あたしには無縁の世界だ。
「今の日本で四大財閥と呼ばれるうち、比較的新興なのは忍月財閥と向島財閥。古くからあるのが、一之宮財閥と西条財閥だ。でその協会の会長は、一之宮の御曹司だ。三芳がどこに泣きついたか、だな」