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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
「HADESどうするつもりですか?」
「俺自身は、そこまでダメージくらってねぇんだ。一度潰す」
「ええええ!?」
「周りが勝手に、売るためのどうでもいい付属品ばかり押しつけてきていたからな。演奏者を俺が選んだと言っても、リストから選んだだけであって、俺自身が見つけたわけじゃねぇし。ボーカルだって、まだお前が見つけていないのも意味があるように思えてな。別に三芳社長の力がねぇと出来ねぇわけでもねぇし、秘密裏でエリュシオンではなく俺のシークレットプロジェクトで動こうと思ってる」
あたしは唖然とした。
既に早瀬は前を向いている。
凹まず、違う選択肢を選んでいた。
どんな形をとるにしても、早瀬の音楽の追求心は廃れることがないのだ。
さすがは王様だ。
「あ、あたしがオリンピアに来ることなかったんだ……」
なんだか気が抜けて項垂れてしまうと、早瀬は片手を伸ばしてあたしの頭を撫でた。
「お前のおかげで、朝霞の狙いがわかったじゃないか」
「わかったんですか!?」
「まずは俺を利用して、名を上げようとしていること。そして多分、お前だ」
「なぜにあたし!」
「恐らく……俺を動かすものだと思われた。朝霞に」
「あたしそんなこと言ってないのに!」
「……まぁ、当てずっぽうというものでもねぇし。それに、朝霞のあの目」
「朝霞さんの目?」
「俺を利用したいくせに、敵意丸出しだった。すげぇ黒い笑みだったし。そんなの考えればひとつしかねぇ。……ああ、むかつく。なのにあいつにへらへらしやがって」
「へらへらもなにも、あたしが尊敬していた上司だったんですから」
「ああ、ここでブレーキ踏んで、その口塞ぎてぇ!!」
「ここは首都高です!!」