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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
 
 

「……お前、あんなに俺とキスして感じていたくせに、なんで乗り換えようとすんだよ。アキだけでも腹立つのに」

「感じ……乗り換えってなんですか! 亜貴がなんで関係あるんですか!? あたしにとって朝霞さんは、いつまでもいい上司なんですよ。どんなに今は悪くても、恩を感じているんですから」

「俺だっていい上司だろうが。恩を感じるのなら俺にすればいいだろ!? なんでその言葉遣いに戻るんだよ、俺といる時にまであいつの影を引き摺らなくてもいいだろう!?」

 早瀬が声を荒げてくるから、あたしも負けじと声を張る。
 
 理不尽なことには、徹底抗戦だ。

「あなたは直属の上司ではないでしょう!? それにいいだけいつものように話させておいて、朝霞さんのせいにしないで下さいよ」

「お前、俺よりあいつの方を庇うわけ?」

「はあああああ!?」

 その時、あたしが手にしたままのスマホが震えた。

「……うわ」

「なに」

「いえ、なんでもないです」

「だからなに!」

「ハンドル! ハンドルから手を離さないで下さい、わかりましたから、これです、これ! いつの間にか、LINEが出来る状態になってたんです。朝霞さんと!」

 『上原、今度食事にいかないか?』

「……俺、時間かかってようやくLINE出来るようになったというのに……。なんであいつは……」

「すみません、聞こえませんでした。なにか?」

「うるせぇよ! 削除してブロックだ。なんだよ、その渋い顔。貸せ!!」

「あ、ひとの!!」

 そして、LINE画面から勝手に削除されてブロックをしたようだ。

 すると……。

「なんで俺のプライベートの方に来るんだよ、あいつ!!」

『邪魔するな』

「あははは。朝霞さん、お友達欲しいんじゃないんですか?」

「人ごとだと思って……っ、俺はいらねぇよ!」

 貧血で倒れたことも忘れ、言い争うようにして車は走り、エリュシオンについた時は、くったりとしていた。


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