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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
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早瀬がエリュシオンに戻ったことで、HADESプロジェクト緊急会議は再開された。
休憩しながら待ってくれていたメンバーに本当に申し訳ない(早瀬がいないとなにも出来ない奴ら、とも言うけど)。
あたしがオリンピアに猛進せず、あたしが倒れず、あたしがスマホを落とさなかったら、プロジェクトの推進者である早瀬が抜けることはなかったのに。
HADESプロジェクトの正式メンバーではないあたしは、会議に参加することは出来ないが、オリンピアによるプロジェクトの強奪で、プロジェクトが白紙になった場合、これまでかけた費用と見込み収益を考えると、かなり大きな痛手となる問題であったみたいで、プロジェクトに関係ない全課課長も招集されたまま、出てこない。
……三芳社長はどうしたんだろう。
相変わらず女帝が受付におらず、一階の一室が閉まっていたけれど、怖くて確かめられない。
あたしは……針の筵だ。
美保ちゃんみたいに、あたしがオリンピアのスパイだと噂している社員が大半で、このわざとらしいひそひそ話と白い目の意味するところは、あたしにだってわかるんだ。
「恥知らず」
ふたつ隣の席の、いつも茂と一緒に悪意を向ける育成課の藤岡くんの声。
狐目のいつもキツいことばかり言う藤岡くんは、ムースで黒髪を流して格好は決まっているのだが、短足が残念なイマドキ系の子。
彼は大声を張り上げて言った。
「あ~、テンション下がるなぁ。スパイが上司だと」
大声を合図としたように、わらわらとひとがやってきて、悪意が集結する。
「……あのね、あたしは」
「まったくだよな」
あたしを無視して同調したのは、藤岡くんと同期のイベント課の篠塚くん。
茶髪を短く刈り上げ、ちゃらっとした感じだ。
お顔は、現役高校生の裕貴くんの方がよっぽど整っていて、イケメンだ。