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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
「これがお前の部屋か……。もっとピンクのふりふりしたのとか、ぬいぐるみとかあるのかと思った。居心地いい」
「あ、ありがとうございます。あたしロリじゃないので」
出汁を足そうかとも思ったけれど、作り直すことにして、お鍋を洗う。
「OSHIZUKIビルにすげぇロリが入ってくるって知ってた?」
「え、ロリが!?」
思わず振り返ってしまう。
「どうもそれが、下の会社らしいんだけどよ、ITって本当に胡散臭ぇよな。大体コンピューターを動かしてなんだってんだよ、コンピューターはメインじゃなくてサブ。メインは人工的なものじゃなくて、自分の感性を使えといつも思う」
辛辣だ。
「別にITだって、頭使っていると思いますよ?」
「たとえば?」
「たとえば……」
出てこない。
キーボードをカタカタして、なにをしているのかイメージがつかない。
下のシークレットムーンで、千絵ちゃんなにをしているって言ってたっけ。
「出てこねぇだろ? コンピューターの奴隷になってなにがいいんだか」
「……個人的な恨みでもあるんですか?」
「別にねぇけど、なんというか本能的に嫌だ。どうせインテリぶってる奴らの集団なんだろうし。虫唾が走る」
「千絵ちゃんは、普通の女の子でしたけどね」
「……案外腹黒かもしれねぇぞ、その女も」
「本当に嫌いなんですね、IT」
「ああ。なぁ、テレビ、つけていい?」
「どうぞ」
テレビの音がする。
早瀬がテーブルの上に置いてあったリモコンで電源を入れたようだ。
すると最近よく聞く、ある新興宗教の教団のCMソングが流れてくる。
宗教法人〝天の奏音〟。
茂顔負けのでっぷりとしたおじさん教主が、どこまで耳朶が伸びるんだ……と言わんばかりの福耳と、菩薩のような笑みを浮かべて曰く、神のお告げというものは必ず声なり音楽なりで構成されているようで、それを解読できるらしい教主が予言をしたとかしないとか。
よくテレビに出て、ポスターが貼られているこの教団のイメージソングが、CMに流れている……ほのぼのとした、幼稚園児が歌うようなもので、そのインパクトに覚えてしまったのは、教団の思う壺のところなのか。
「……つけた途端これか。これ、長谷耀(はせ よう)が作ったんだよな」
早瀬の呟きが耳に届く。