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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
 


「ふぅん。背、高いの?」

「早瀬より高いよ。バスケしてたらしいから」

「……ふぅん? でさ、朝霞の用はなんだったわけ?」

「え、月曜の……」

 そしてあたしは包丁を持ったまま振り返る。
 質問はするくせにやる気のない返事をしていた早瀬から、突然変わった話題を知れる方法はひとつ。

「ちょっと! ひとのスマホ、なに勝手に見てるのよ!」
 
「ずっと俺の目の前にあったから。見て欲しいのかなって」

「見て欲しいわけじゃないわよ。もう」

 あたしはポケットにスマホをねじ込んだ。

「月曜ってなに?」

「……っ」

「言え。俺に隠さねぇとならない話なのか? ……やっぱり気になるって? あの胡散臭い社長とデートの約束?」

 じとりとした目が向けられる。
 
 それを無視して、素麺を掬いに慌ててキッチンに戻る。

 ……隠せないな、こりゃ。
 話がおかしな方向に進みそうだから、きっちりと言っておくか。

「あたし、月曜の夕食、朝霞さんと食事して話を聞こうと思う。朝霞さん、ちょっとキャラも変わってたから、話を聞いてみたいの。彼食事を誘うタイプじゃないし、なにか意味あると思うのよ。相談に乗って欲しいのかも」

「……。聞いて解決できるわけ?」

「……それは」

「聞いて、やっぱりダメな奴だったらどうするんだ?」

「その時は、敵対するしかないね。はい、お待たせ。出来たよ」

 テーブルに置くと、早瀬が両手を伸ばしてどんぶりではなく、あたしを持ち上げ、彼の膝の上にあたしを置いた。

「ちょ、なに……」

 早瀬は、後ろからあたしを抱きしめるようにして、その美しい顔をあたしの顔の真横に出して、ふぅふぅ息をかけて煮麺を口にした。

「うまいけど……あち」

 そしてあたしのほっぺにキスをして、舌を頬につけてくる。

「な……」

 逃げようとしたあたしの身体はがっちりと早瀬の左手にホールド。
 
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