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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
 


「ちょっとなに怖いこと言ってるの。だったらまるで、あたしを狙っているようじゃない! たまたまいなくなっただけでしょう?」

「たまたま、だといいがな。俺も初めて見た車だからなんとも言えねぇが、ナンバープレート……隠してたんだ」

 ぞっとする。
 なにこの展開。

「あたし今までなにもされたことないし、他のひとじゃない?」

「だといいな。……だけどなにか嫌な予感するから、俺これから車で送り迎えしてやる」

「な、いらないわよ、そんなもの」

「大丈夫かどうかは、俺が決める」

 早瀬の顔は真剣だった。

「家にいる時は、戸締まりしてろ。俺以外は絶対開けるんじゃねぇぞ。なにか物音が聞こえたら、俺に連絡すること」

「わかったけど……考えすぎじゃない?」

「だから、それは俺が決めるって。何事も疑ってかかれば、なにか起きるはずのものも起きねぇから」

「うん……」

「朝霞のキャラ崩壊ってどんなの?」

「え、あたしに告るような冗談言ったり。そういうひとじゃなかったの、朝霞さん。女の子は近寄るけど、笑って逃げる感じで。ゲイの噂があったくらいのひとだったから」

「………」

「早瀬?」

「………」

「おーい」

「……ちょっと殺意が」

 物騒な声が聞こえた。

 抜け出るのは今だと身体を動かそうとしたが、失敗。

「確かに、二年ぶりにお前が現われたから、嬉しくて興奮して……というのも考えられる。だけど、それにしては、俺に嘘のメールをするとかガキじみてるし、お前に変態電話するのもねぇさ」

「変態電話って……」

「今まで会っていたのならともかく、ひさしぶりの相手にキャラ崩壊して誰得だ?」

 確かに、昔の朝霞さんは颯爽として凜々しくて……だけど今の朝霞さんは軽い男になってしまっている気がする。
 
 早瀬を振り回して、家にまで来させる意味がわからないし。

「月曜日も、俺がついてくること見越しているのかもしれねぇな」

「そんな……」

「あいつが、アホじゃないのなら」 
 
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