この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
「……でも変わっちゃったんでしょう、朝霞さん」
「人間、どんなにしても変われねぇ芯の部分がある。お前、昔と同じ部分はどんなところだと感じた?」
「えーと、爽やかな声? キラキラオーラ?」
「……俺のオーラはどんな感じ?」
「え……」
「怒らないから、言ってみな」
「陰湿な、どす黒いオーラ」
ぺしっと、おでこを手で叩かれた。
「なに!? 怒らないと言ったじゃない」
「いや、なんとなく。俺の手が動いた」
「ひど」
今だ!!
腰を上げたが失敗。
上から覆い被さるようにされて、ますます動けない。
このぬくぬくといい匂いがする椅子に、どっぷりと浸かりたくないのに。
「朝霞の話だけど、それだけ? 変わってねぇと感じたの」
「うん」
「じゃあ必死に隠さねぇといけない部分があるんだな、きっと」
「隠さないといけない部分?」
「昔を知るお前だから、今の変わった部分を見せたくない。だからあんなちゃらけた動きをしてるんだろう」
「随分と朝霞さん、理解してるね?」
「……やり手なんだよ、オリンピアは。中でも朝霞社長はかなり強引で、ひとを見抜く力が卓越していて、犯罪ぎりぎりのところで脅して押さえつけると聞いたことがある」
「脅す……そんなことしないよ、朝霞さんは。人情派だもの」
空っぽになったどんぶり。
だけど離れないコナキジジイは、頬をあたしの頬にすりすりしてくる。
「だからだよ。昔馴染みのお気に入りだからって、やり方があるだろう。まあ……やり方がわからず、馬鹿みてぇな縛り方する奴もいるけどさ」
早瀬があたしの手を触ってくるから、パンと叩くと、逆に握られ離れない。
この男は、抵抗すればするだけ力で押さえつける男だ。