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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
 

「……でも変わっちゃったんでしょう、朝霞さん」

「人間、どんなにしても変われねぇ芯の部分がある。お前、昔と同じ部分はどんなところだと感じた?」

「えーと、爽やかな声? キラキラオーラ?」

「……俺のオーラはどんな感じ?」

「え……」

「怒らないから、言ってみな」

「陰湿な、どす黒いオーラ」

 ぺしっと、おでこを手で叩かれた。

「なに!? 怒らないと言ったじゃない」

「いや、なんとなく。俺の手が動いた」

「ひど」

 今だ!!

 腰を上げたが失敗。
 上から覆い被さるようにされて、ますます動けない。

 このぬくぬくといい匂いがする椅子に、どっぷりと浸かりたくないのに。

「朝霞の話だけど、それだけ? 変わってねぇと感じたの」

「うん」

「じゃあ必死に隠さねぇといけない部分があるんだな、きっと」

「隠さないといけない部分?」

「昔を知るお前だから、今の変わった部分を見せたくない。だからあんなちゃらけた動きをしてるんだろう」

「随分と朝霞さん、理解してるね?」

「……やり手なんだよ、オリンピアは。中でも朝霞社長はかなり強引で、ひとを見抜く力が卓越していて、犯罪ぎりぎりのところで脅して押さえつけると聞いたことがある」

「脅す……そんなことしないよ、朝霞さんは。人情派だもの」

 空っぽになったどんぶり。
 だけど離れないコナキジジイは、頬をあたしの頬にすりすりしてくる。

「だからだよ。昔馴染みのお気に入りだからって、やり方があるだろう。まあ……やり方がわからず、馬鹿みてぇな縛り方する奴もいるけどさ」

 早瀬があたしの手を触ってくるから、パンと叩くと、逆に握られ離れない。
 この男は、抵抗すればするだけ力で押さえつける男だ。
 
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