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エリュシオンでささやいて
第5章 Haunting Voice
 
 
「考えてみれば、俺を出し抜くのなら俺に連絡してこなければいい。それが嘘をついてまでお前の家に来させた……そこに理由があるとすれば、やはりあの黒いボックスカーが怪しいんだよな。なんで朝霞がそれを知ったのかはわからねぇけど」

 怖いなあ。
 ここ、引っ越したくないんだけどなあ。

 それに――。

「朝霞さんが連絡しなきゃ、こうやって家にあげずにすんだの……いたたっ」

 後ろから回った手が、あたしの頬を横に伸ばした。

「お前、最近なにかしたとか心当たりねぇの?」

「ない」

「即答だな」

 早瀬は笑う。

「……お前、朝霞と働いていた時も、この家?」

「うん」

「その時は、朝霞も含めて会社の男、入れたことあるの? 飲み会とかで酔っ払った奴泊めたり、宅飲みとか……」

「だから、ここには男性は入れたことないの。あ、亜貴は別……いひゃひゃ」

 また頬をひっぱられ、捻られた。

「それ、朝霞も知ってるの?」

「うん。女の先輩……真理絵さんが、社内でそう言ってくれたから、箱入り娘みたいに思われたけど」

 痛いほっぺを摩ろうとしたら、その手も握られた。おまけに指を絡ませてくる。抵抗したら、指を手の甲にそらされあえなく撃沈。
 
「じゃあやっぱり、朝霞は入れないことはわかっていて、俺に電話したというわけか。きっと俺なら入れると……。一体なにがある……?」

 ああ……。
 もうキャパオーバーだ。

 気にしないように喋りまくっていたけれど、この密着度合い勘弁してよ。
 なんで孤高の王様が、コナキジジイなのよ。
 
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