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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
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「え!!」
泣いて化粧崩れをした顔を、仲良く隣で修復していた時。
目を修復している女帝を見て、思わずあたしは驚いてしまう。
目が、小さいんだ。
「なによ」
「いや、その……目……」
「大変なのよ、毎日面倒でも時間かけて大きく見せるようにしているんだから! 私のコンプレックスなの、この小さすぎる一重の目!」
「お、大きくなるんだ。あんなにぱっちり二重に……」
「あんた何気に失礼ね! 化粧が上手いと言えないの!?」
「あ、その……ごめんなさい」
「ふん。ひとには黙っているのよ。トップシークレットなんだから」
「はい。だけどよかったんですか、あたしにトップシークレットを」
「……あんたが、頼んでもいないのに勝手に隠したい傷を見せてくれたんだから、これでも足りないくらいでしょう。馬鹿じゃないの?」
「……っ」
口は悪いけど、ほんのりと頬を赤く染める女帝は……いいひとな気がする。
「とにかく私、これからあんたにはネコ被らないから。だからあんたも、ビクビクおどおどしないでよ。私は化け物じゃないんだから」
「はい」
「なににまにましてるの。気持ち悪い」
……口、悪いなぁ。
そう思うけれど、なにか楽しくて。
「よろしくご教授下さい」
そう頭を下げると、
「堅苦しいわ。とりあえず、その言葉遣い直したらどう? 私は年上とはいえ、私達、対等なんだから」
やはりどこか頬を赤く染める女帝がふんと横を向く。
「わかった。よろしくね」
「よろしく、柚」
「えええええ!?」
「なによ、悪い!?」
「いや、そうじゃなくて。知ってたんだ、あたしの名前」
「私は有能な秘書兼受付嬢よ、馬鹿にしないで! あんたは馬鹿だから、私の名前、知らないでしょうけど」
「知っているわよ。三芳奈緒さんでしょう?」
「だったら、やり直し。はい、よろしくね柚」
差し出される片手。
「はい。よろしく、奈緒さん」
重ねる手。
……にっこりと満足げに笑う女帝……奈緒さんの顔は、既にぱっちりとした大きな目があり、とても綺麗だった。