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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 

『既読無視は許さねぇぞ。なぁ、怒ってる理由を教えてくれよ。気になって会議に身が入らねぇ。怒ってねぇなら勘違いだと言って』 

 返事を書くのも嫌だけど、会議の妨げになるのもと思ったあたしは、ウサギが怒りまくっているスタンプを押した。

 そういえばこれが早瀬に返す初めてのものだ。

『やっぱり怒ってる!? どこが!?』

 わからないのが余計に腹立たしい。

 直後、汗を飛ばしている、りすのスタンプが送られてきた。

 なんだ、りすの自覚あるのか、りす王め。
 あんなにりすの被り物が嫌だと言ってたくせに、スタンプは用意しているのか。ほーほー、誰とこのスタンプのやりとりしてたんでしょうね。

 そういえばそんな女はいないとか力説して、スマホも見せてくれたけれど、仕事用のスマホの中にカモフラージュされているんでしょうかね。

 信じられない!

 そう思ってスマホの電源を切って、さあメールチェックをしようと思ったら、パソコンが立ち上がらない。

 コンセントも抜けていないし、何度も電源ボタンを押したが、うんともすんとも言わない。

「おや?」

 ひっくり返しても側面にも、全く異常はないのに、起動しない。

「やば! 中にある報告書、今日提出しないといけないのに」

 既に作成してあるのに、外部保存していなかったために立ち上がらないパソコンの中にしかなく、このままパソコンがおかしくなってしまったのなら、報告書もその他諸々まとめていた貴重な資料もデータも、すべてなくなる。

 え、パソコンってこんなに突然おかしくなるものなの!?

 さぁぁぁと血の気が引いたあたしは、パソコンを手にして下のシークレットムーンに行って見た。

 パソコンを取り扱うところであるのなら、きっとパソコンも復旧して貰えるだろうし、あるいはデータを吸い出してくれるかもしれない。

 初めて行く千絵ちゃんの会社だ。

 ドアを開けると、同じ間取りのはずなのにやけに閑散として思えた。

 受付がないから、どこに声をかけていいのかわからないが、丁度こちらに向かってきてくれる女性がいた。

「どうかしましたか?」

 髪の毛をアップにしている、やや童顔のかわいい系の美人だ。
 春めいたピンクとかの服なら似合うだろうに、きっちりとした白黒のスーツで大人のお洒落を演出している。

 
 
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