この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「なに、誘ってるの、その目」
「違うわ!」
「あはははは」
なに嬉しそうに笑っているんだ、このスケコマシ!
「本命がいるんだから、キスをしないでって言ったでしょ!?」
途端に早瀬の顔から笑みが消え、その切れ長の目が苛立たしげに細められる。
「だからなんでお前がそんなこと言うんだよ。それにさっき言ってた牽制って何だよ」
「あなたが、しっかりとあたしを見て、本命がいると言ったことよ!!」
傷口が抉られる。
「だからなんでそれが牽制なんだよ」
あたしの心知らず、段々と早瀬の声が荒げられてくる。
「キスしたからって自惚れるな、お前は愛人止まりだ、この身の程知らず……って言ってたんでしょう!?」
……ちょっと盛っちゃったけど、嘘ではない。
言ってから、凹んだ。
「いつ俺がそんなこと言ったよ!」
「目で!」
「はあああ!?」
「はあああ!?じゃないわよ、このスケコマシ!! 女の敵!! 本命がいるくせに、あっちもこっちも思わせぶりで……離せったら……!!」
「嫌だね。俺、言っただろう!? スマホも見せただろう!? 遊んでいる女もいねぇし、お前に誤解されるような女もいねぇ!!」
「へー」
早瀬は舌打ちする。
「なんでお前に誤解されねぇように、きっぱりと三芳をフッたのに、お前に誤解されてるんだよ。しかもなんで、愛人とか女の敵とまでになってるんだよ」
「知らないわよ、そんなの自分の胸に聞いてみたらいいじゃない!! スマホだってね、本命をプライベート用に入れてなかっただけでしょう!?」
「じゃあ仕事用の見ろよ!!」
怒る早瀬がポケットの中から、仕事用のものを出した。
「アドレスから発信履歴から、すべて見てから言え!! もしなんなら電話していいぞ、片っ端から」
突き出されるスマホは、まるで黄門様の印籠のようだ。
「いらないわよ、暗記してたら公衆電話だってかけられるじゃない!!」
「ああ言えばこう言う。じゃあどうすれば俺は、身の潔白を証明出来るんだよ!? ここで泣いてお前に土下座でもすればいいのか!?」
「なによそれ、開き直るな、馬鹿!!」
口から出る言葉は止まらない。