この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
それを隠して話題を変えた。
「誠実さ? 皆の前で女帝を振ることが?」
「お前に、誤解されたくなかっただけ。お前、三芳に言い寄られている俺放置して先に行こうとしてたろう。どうでもいいというより、軽蔑されていると思ったから、きっちりと線を引こうとした」
「でも、本命がいるんでしょう?」
「お前、俺の言葉信じねぇくせに、そういう言葉は素直に信じるよな」
早瀬が苦笑して言う。
「まさかお前から、牽制という発想が出てくるとは俺も思わなかった。……お前、あれで自分が俺の特別かもとか思わねぇの?」
「特別?」
「そう。特別だから構われていると。そう思えね? キスもセックスもしていて、仕事外で会っていて。お前嫌がっても、俺強引にいくじゃねぇか」
腕を掴まれ、首を傾げながら訊かれる。
「いや、でも性処理だから……」
「ただの性処理を夜景の見えるレストランに連れて行くと思うか?」
「夜景好きなんでしょう?」
「……性処理がリクエストしたからと、プライベートで音楽演奏するか?」
「皆がいる手前、引くに引けなくなったと言ってたし」
「……。ゲロ吐いた性処理にキスすると思うか?」
「あ、安心させるためでしょう?」
「性処理の都合に合わせて、セックスしたいの我慢すると思うか!?」
「そ、そんなの男の事情で……」
「ただの性処理に、こんなに身の潔白を訴えると思うか!?」
「そ、それは……」
なんでそんな執拗に。
だったらまるで、早瀬があたしを好きなように思えるじゃない。
あたし、自惚れたくないのに。
「まあ、長期戦は覚悟はしてたけど、お前はいつもそうやって理由を見つけて、否定しているんだな、俺の態度の意味を」
「……っ」
「お前が鈍感というより、信じさせないようにしたのは俺で、今も俺が決定的な言葉を呑み込んで、態度で示そうとしすぎなのも、不信さの拍車を回している……というわけか。ちくしょ……やりきれねぇな」
そう言って、早瀬は抱きしめ、あたしの耳元で甘く囁く。
「……お前だけだよ」
破壊力がありすぎた言葉に、心臓が飛び上がった。