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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 

 それを隠して話題を変えた。
 
「誠実さ? 皆の前で女帝を振ることが?」

「お前に、誤解されたくなかっただけ。お前、三芳に言い寄られている俺放置して先に行こうとしてたろう。どうでもいいというより、軽蔑されていると思ったから、きっちりと線を引こうとした」

「でも、本命がいるんでしょう?」

「お前、俺の言葉信じねぇくせに、そういう言葉は素直に信じるよな」

 早瀬が苦笑して言う。

「まさかお前から、牽制という発想が出てくるとは俺も思わなかった。……お前、あれで自分が俺の特別かもとか思わねぇの?」

「特別?」

「そう。特別だから構われていると。そう思えね? キスもセックスもしていて、仕事外で会っていて。お前嫌がっても、俺強引にいくじゃねぇか」

 腕を掴まれ、首を傾げながら訊かれる。

「いや、でも性処理だから……」

「ただの性処理を夜景の見えるレストランに連れて行くと思うか?」

「夜景好きなんでしょう?」

「……性処理がリクエストしたからと、プライベートで音楽演奏するか?」

「皆がいる手前、引くに引けなくなったと言ってたし」

「……。ゲロ吐いた性処理にキスすると思うか?」

「あ、安心させるためでしょう?」

「性処理の都合に合わせて、セックスしたいの我慢すると思うか!?」

「そ、そんなの男の事情で……」

「ただの性処理に、こんなに身の潔白を訴えると思うか!?」

「そ、それは……」

 なんでそんな執拗に。

 だったらまるで、早瀬があたしを好きなように思えるじゃない。
 あたし、自惚れたくないのに。

「まあ、長期戦は覚悟はしてたけど、お前はいつもそうやって理由を見つけて、否定しているんだな、俺の態度の意味を」

「……っ」

「お前が鈍感というより、信じさせないようにしたのは俺で、今も俺が決定的な言葉を呑み込んで、態度で示そうとしすぎなのも、不信さの拍車を回している……というわけか。ちくしょ……やりきれねぇな」

 そう言って、早瀬は抱きしめ、あたしの耳元で甘く囁く。

「……お前だけだよ」

 破壊力がありすぎた言葉に、心臓が飛び上がった。
 
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