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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「あ、あれは……」
「そう。私達が助けようとしたら、勝手にこのモグラが……」
「そうそう。勝手にこのモグラが……」
「ふふふ、美保さんと同じ事を言うんですね。でしたら、美保さんに言ったのと同じ言葉を」
そして優雅に上品な笑顔で彼女は言った。
「ふざけんな、徒党を組んでも役立たずのハイエナ共が」
ドスの利いた声で。
……わぉ。笑顔なのに殺気が飛んだよ。
「あら失礼、おほほほほ、ごめんあそばせ。私この先、柚と仲良くさせて頂きますから。私、された仕打ちは決して忘れないタチなんで、覚悟してて下さいませ」
目だけ笑っていない作り笑いに、周囲が凍り付いた音が聞こえた気がした。
……昨日までの敵は今日の援軍、心強い味方だと思い知って、あたしは笑いを堪えるのが大変だった。
地下鉄木場駅にほど近い、喫茶店内――。
ここから然程距離は離れていない高級ケーキ店の、キューブ型ケーキを全種取り扱う店内には、女性ばかりが溢れている。
店内は白木造りで明るく清潔感漂う内装になっていて、なにより椅子がぼすっと座れるものであることはポイントが高い。
「だからさ、あんたは理想と計算が高すぎなんだよ」
向かい側で、腕組をして座っているのは久しぶりの裕貴くん。
足元にはボストンバッグと、椅子の横にたてかけられているのはギターだ。
「べ、別にそんな……」
女帝、今までそういう意見を受けたことがないのか、また白目で小指をたてて驚いている。
――柚、ちわ!
せっかくの女帝の誘いを断りたくないなあと思っていた時に、裕貴くんがエリュシオンに来た。女帝に誘われたことを見ていたのか、どこからか現われた早瀬が裕貴くんに囁いた直後、裕貴くんが棒読みで「俺も美味しいケーキ屋に連れて行ってよ、綺麗なお姉さん」と言ったために、気分をよくした女帝の許可もあり、三人でケーキを食べることになった。