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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「ところで裕貴」
「呼び捨てかよ、おばさん」
「あ゛!?」
「い、いえオネエサマ。なんかあのひとみたいだな」
「裕貴は早瀬さんの信者なの?」
「めちゃくちゃ尊敬してる。音楽だけは」
……ちょっとひっかかる言い方だけれど。
「私設ファン倶楽部の会長は私だから。あんたと柚で副会長ね」
「あやしい宗教にするなって! もういい加減あのひとから離れて、次の相手探した方がいいって」
「柚に言わないで私にばかり次を勧めるのが気に入らないわね。だったら早瀬さんなみのイケメン、連れて来てよ。それともあんたが……ふむ。よく見たら悪くない顔してるわね」
「やめろって! 俺にも好みがあるんだよ!」
「失礼ね。どんな好みなのよ」
「おとなしそうだけど芯がしっかりしてて根気強くて、ちゃんと周り見てる優しい奴! KYじゃなくひとの痛みをわかれる奴!」
裕貴くんそういう子がタイプなんだと、微笑ましく見ていたあたしに、女帝の視線が向けられていた。
どうしたのかと首を傾げると、女帝はにやりとして言った。
「なんだ、柚がタイプなのか。なに、口説くつもり?」
途端に響く裕貴くんの絶叫。
「うわあああ、やめてくれ! 絶対冗談でもあのひとに言わないでくれよ、俺死にたくないよ、音楽ちゃんとやりたいよ、あのひと敵に回したくないんだよ!!」
そう裕貴くんが、なぜか半狂乱になって騒いでいた時だった。
「奇遇だね、こんなところで会うなんて」
ひとりの爽やかな男性が、キラキラオーラを纏いながら声をかけてきたのは。
「なにこの、イケメン!!」
女帝のイケメンセンサーを即時に反応させたのは、裕貴くんを出動させた元凶である……朝霞さんだった。