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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 


 ここでまさかの朝霞さんの登場に、自然と顔が強張るのを感じる。

――嘘をついてまでお前の家に来させた……そこに理由があるとすれば、やはりあの黒いボックスカーが怪しいんだよな。

 朝霞さんがなにを考えているのかわからない。

 だからこそ、このタイミングがよすぎる登場がなにか怖い。

「ど、どうして朝霞さんがここに……」

「俺、甘い物好きなの、上原はわかってるよな?」

 照れたように笑う朝霞さん。
 そこには、二年前の顔があった。

 ……思い出せば、朝霞さんは甘い物に目がなくて、昔も話題となったスイーツのお店には必ず顔を出しているというマメさはあった。

「ここに、いつかは来たいと思ってて、ようやく来れたと思ったら、まさか上原に会うとはなぁ。すごい偶然だ」

 偶然なのか、必然なのか。

 必然であるというのなら、青山から木場にまで赴いた理由が必要だ。もしもこの喫茶店に故意的に入って来たのだとしたら。

「俺も、ここいい? ひとりではさすがに恥ずかしいなと思ってて」

「はい、どうぞ」

 そう返事をしたのは女帝。
 早瀬に二年も片想いしていた割には、目はキラキラだ。

「ねぇ柚さん。こちらの方はどなたなの?」

「ああ……奈緒さん。こちらは、エリュシオンの前身に居てあたしの上司だった……、今はオリンピアの社長をしている朝霞さんです」

「オリンピア……」

 女帝が警戒したような声を出せば、朝霞さんはなにも気にしていないというように、いつものキラキラオーラを出して言った。

「初めまして、朝霞です。俺はきみのことを知っていますよ、MSミュージックの三芳社長のお嬢さんでしょう? いつもお父さんにはお世話になっています」

 朝霞さんと女帝の父親が面識あるのは、協会とやらが関係あるのだろうか。
 
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