この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「我慢もなにも……、そんなこと奈緒さんにして貰うことは……」
すると女帝は、気づいたようにポンポンと、自分の身体についたガラスの破片を手で落としながら、言った。
「私ね、父親が成金趣味で、そのせいで金に困らずちやほやされて育ったのよね。弟見てると、昔の自分を思い出してうんざりするんだけど」
「……」
赤レンガでの彼を思い出す。
顔はよく見れなかったけれど、うん……ちょっと難ありだったよね。
「そんなんで、金ですべてが解決出来るという環境が当たり前で。周りから女帝とか言われていい気になっててね」
今でも女帝、だものね。
「だけど目覚めるわけよ、周りは皆、私の肩書き目的だということに。私を見て貰うためには目が小さすぎるから、目を大きくする整形手術をしようとしたら、親父に猛反対されてさ。グレてレディースに入ったこともあったけど、化粧に目覚めてコンプレックスがなくなったのよね」
……今さらっと、グレてレディースに入ったこともあるとか言ってなかった? え? 元ヤン?
「金ではなく、己の美貌で世に君臨してやろうと思ったんだけど、早瀬さんを追いかけて、最初で最後の親父の力を借りてエリュシオンに来て。ここで困った時に手を差し伸べてくれるような、そういう……いわゆる友達というものを作ろうとして、あの三人がそうだと思っていたけれど、違った。それがあんただったとは、二年も知らないでいたけどさ」
女帝はにっと笑った。
「助けられたら助ける。助けられなくても助ける。それが友達でしょう?」
ああ、なんだろう。
夜露死苦!
とか言われている気がするのは。
裕貴くんの通話が終わったようだ。
「よし、小林さんと連絡ついたよ。近くにいるらしいから、来てくれるって。柚が顔わかっているんだろう?」
「うん。ガテン系の感じのひとだよ」
「ガテン系とあのひとと、なんで繋がりあるんだろう。まあいいや、おばさんどうする?」
「タイマンなら腕が鳴るから、私、柚の護衛につくわ」