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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「さらっとなに言ってるのかわからないけど、おばさん。柚の護衛はきっとあのひとが譲らないと思うけど」
「女同士じゃないと出来ないことあるでしょう? 早瀬さんだって全能じゃないんだから」
すると裕貴くんは困ったような顔で、女帝に訊いた。
「……おばさん、あわよくばあのひとに取り入ろうとか、そういう邪なこと考えていないよね?」
「ないね」
きっぱりさっぱりと。
「こんな状況見たら、昔の古傷が疼くというか……こちらの話。私は柚が心配なの。私もなにかに役立てれると思うわ、なんならご飯作りでもいいし」
「わかった。おばさん信じる」
「信じるのは構わないけど、おばさんやめて」
「わかった。じゃあ……三芳さん」
「なんで柚が柚で、私は苗字のさん付なのよ」
「名前を呼んだら怖いもん。食われそう」
「あ゛!?」
あたしは笑ってしまった。
「まあいいわ。私、自分の家から柚の着替えとか用意して、スタジオに行くわ。場所はわかってる。早瀬さんのことなら」
あたしは裕貴くんと顔を見合わせて、苦笑した。
「柚、LINE交換しよう」
「うん」
あたしのスマホのLINEは、亜貴、裕貴くん、早瀬。そして女帝が並ぶことになった。こんな状況だけど、やっぱり同性がいるのが嬉しい。
後でLINEに生理用品もお願いして、持ってきて貰おう……。
「須王さんに、三芳さんが来ると言っておかないとね」
裕貴くんに、あたしは言った。
「あたしから言うわ。奈緒さんは頼もしくて信頼できるひとだから、早瀬もわかってくれると思う。もし、奈緒さんにしたことで早瀬が渋るなら」
「渋るなら?」
「横っ面を張り飛ばす!」
拳を裕貴くんに見せると、
「あんた、いい度胸してるわ。現役ならスカウトしてるわ」
「いえいえ、結構です!」
女帝が愉快そうに笑った。