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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
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シルバーメタリックの八人乗りの大きな車……国産のランドクルーザーに乗って、前に見た時のように頭にタオルを巻いたまま、ガテン系かトラックの運ちゃんのような雰囲気で、小林さんは現われた。
女帝は自分の軽自動車をもっているらしく、それでスタジオに来るということで小林さんと顔通しだけをし、青山のスタジオ集合となり、ランクルはスタジオに向かった。
「その朝霞って言うのが、ただ懐かしさで嬢ちゃんにすり寄っているわけではねぇだろうな」
嬢ちゃんとは、あたしのことだ。
小林さんに木場まで来て貰うことになった一連の出来事を説明すると、小林さんは固い声を出した。
「だけど、朝霞が黒服達と共謀していたという線で考えると、沢山の人間がいる中で、そんなご大層な毒や薬を使って、嬢ちゃんを麻痺させる必要があるのか、という点が疑問だ」
「でもさ、麻痺したら黒服が運びやすいじゃないか」
裕貴くんが身を乗り出すようにして言った。
「運搬的にはそうだろうが、相手は銃を持ってたんだろ? もっと効果的な運び方があったと思うんだよ。どうせ銃に脅され誰も手出しできねぇだろうし、そのまま無理矢理攫うのを、朝霞が助ければいい。朝霞が嬢ちゃんの腹なり延髄なり一発殴って気絶させればいいだけだ。それが回復しないかもしれないものを服用させるのが変だし、それになぜ座らせようとしたんだ? 立たせておいて、こっちだと合図を出せばよかったじゃないか」
確かにそうだ。
――いいから、早く座れ!!
朝霞さんは怒ったのだ。
「でもさ、くまのおっさん。朝霞は、外を気にしていたんだよ。黒服を待ち構えていたとしか思えないよ」
くまのおっさん……とは、小林さんのことだ。
裕貴くんの周りには、りすとうさぎに加えてくままでも、森の仲間が集まっているようだ。
「……もしもだ。朝霞は、外からの者達から嬢ちゃんを守ろうとしていた、は? 黒服が来る情報を事前に掴んでいた、としたら」
あたしと裕貴くんは顔を見合わせた。