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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「じゃあなんで、朝霞が勧めたケーキに……」
「店員が無表情だったんだろう? その店員が、正式な店員なのか調べないといけないな。もしそんな店員がいないのならば、ケーキを持ってきた店員が麻痺させる薬を入れて店員になりすます必要があった、ということだ。黒服が銃を出していた時、その店員は加勢したのか?」
「してません。ただ黒服ひとりが歩き回って銃を撃って、なにかを探していたと思います」
「やはり、なにか妙だな。銃を持っているのにプロらしくねぇんだよ。スマートじゃねぇっつーか、証拠残しすぎっつーか。おまけナンバー隠してある、いかにも怪しい車を、人通りのあるところに置いて、外に出てきたお前ら確保しようと動き回っていたわけだろ?」
確かにそれは言える。
喫茶店の窓硝子を割って、あれだけ銃を乱射する必要があったのか、と。
あんな大騒動をおこしたのなら、ニュースになったり、夕刊にでも載ってしまう。目撃証言もたくさんあるし、警察が調べたら、足がついてしまうのではないか。
「ただ、朝霞が外の車と黒服の存在に気づき、それが嬢ちゃんを狙う者だと知った上で、嬢ちゃんを本当に助けるつもりであったのなら、お前達が外に出た時、銃を持った男も外に出たんだろうから、なぜ追いかけてこなかったのか、だ。外に出れば危険が少なくなる……と考えるアホじゃないだろう」
朝霞さんは喫茶店に残って、なにをしていたんだろう。
「お前達はテーブルの下に潜っている間、朝霞がどんな反応をしていたのか、わからねぇしな。目で誰かに合図していたのか、お前達を隠そうとなにかしようとしていたのか」
「朝霞がなにしたいかわからねぇっ!!」
裕貴くんが頭を抱えた。