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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「う、わ……」
バスケのコート一面くらいの広さ。
ぴっかぴかに磨かれた白い床。
そこにドラムが鎮座しており、壁にギターとベースが博物館のようにずらりと並び、バイオリンやコントラバス、そしてグランドピアノまでが置いてある。
重厚で大きな執務机には、パソコンの画面と思われるものが置かれてあり、机の横にはギターとシンセサイザーがスタンドにおかれてある。
「○△×◇!!」
裕貴くんは意味不明な言葉を吐いて、突然スマホを取り出して、まずは壁にかけられているギターの写メを撮り始めた。
涙目でなにかを訴えてくるが、言葉が理解出来ないからよくわからない。
小林さん曰く、ギターリスト憧れのプレミアもののギターが置いてあるらしく、よく見ればサインらしきものもちらほら見える。
裕貴くんは床に座り込むと、土下座をして頭を深く下げている。
小林さんは奥にあったドアに赴いてしばし姿を消していたが、やがて戻ってくる。
「この奥はミーティングルームだ。リビングみたいなものだと思ってくれれば。冷蔵庫が空だろうから、色々買いそろえて入れておいた。好きに飲めよ」
小林さんは、肩に下げていたボストンバックを畳みながら言った。
裕貴くんとミーハー気分で覗いてみると、重役用の応接室より遙かに立派で、荘厳だった。テレビやミニバーみたいなものがあるが、くつろぐ雰囲気ではない。
ソファだけではなく、王様が座るような……一人がけ用の背もたれがついた、アンティーク調の椅子があり、どう見てもハデス様が座るのが相応しい。
この調度は、自分で用意したんだろうか。