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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
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午後八時ちょっとすぎに、女帝合流。
そして午後九時半に、早瀬は帰ってきた。
それは、ゲストルームでの簡易キッチンで作った夕飯を終え、スタジオ横のミーティングルームで、四人でトランプをしていた時だった。
車で帰ってきたようだったから、会食でお酒は飲まなかったのだろう。
小林さんが、スタジオの隣にいるとメッセージしていたようで、豪奢な空間に違和感なく溶け込んだ早瀬は、ある一点で動きを止めた。
……いつものようなお上品なスーツではなく、ポニーテールにパーカーにジーパンという軽装をしている女帝を見たまま、怪訝な顔をしている。
やがて怒りを帯びた目になったため、彼が口を開くよりもまず、あたしが頭を下げて言った。
「奈緒さんは、あたしを助けてくれたんです」
「助けた? なにかあったのか?」
「はい。三人で居た喫茶店に、朝霞さんが現われて……黒服の男が銃を乱射して入って来ました」
「!!!」
早瀬の目が見開いた。
「だけど、裕貴くんの機転と奈緒さんによって、拉致されそうなところをなんとか逃げ切り、小林さんに来て貰って、ここまで来れました。ちなみにその黒服とは、うちの前に居た黒いボックスカーから出てきました」
「怪我はしていないのか」
動揺を隠すように、低く低められたその声は掠れていて。
「してません。皆さんのおかげで」
「そうか……」
早瀬は表情を隠すように手のひらを顔に当て、そのまま髪を掻き上げた。
裕貴くんが困った顔をして言う。
「朝霞は、黒服の存在を知ってたようなんだよ。で、朝霞が柚に勧めたケーキを後で野良猫に食べさせたら……、麻痺して痙攣してさ。動物病院の先生曰く、ふぐの毒のような症状みたいで」
「朝霞が直接用意したものなのか?」
早瀬は斜めからあたしを射貫く。