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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 

 楽しかったよ?
 心強かったよ?

 だけど早瀬の顔を見ていたら、その力強い声を聞いていたら。

 ……足がかくかくと震えてきて。
 悟られないようにと頑張るほど、今度は身体全体がカタカタと震撼して。

 銃声と硝子の破片、そして猫の痙攣が頭にリピートして、すごく息が詰まってドキドキする。

 もしも銃弾があたしを貫いていたら。
 もしもあの猫のようにあたしの身体も麻痺していたら。

 今あたしは、ここにいない。

 なにをされていたの?

 ぶるぶると突如寒気があたしを襲った。

 ああ、あたし……怖かったのか。
 今まで裕貴くんや小林さん、女帝に対して……怖さなんてないふりをしていただけなのか。

 そう思ったら――。

「……っ」

 泣きたくないのに、目から涙が後から後からぼろぼろ零れてくるんだ。

「怖かったな?」

「………」

「柚」

「……うん」

 なんで早瀬はわかるの。
 どうしてあたしもわからなかった心情を、見てすぐわかるの?

「ごめん……」

 やるせなさそうに唇を奮わせた早瀬。

「あなたのせいじゃない」

「俺のせいだ」

 零した涙を、早瀬は唇で吸い取った。

「今度は、俺がお前を守る」

 悲哀に満ちてながらも、確固たる意志を秘めたダークブルーの瞳。

「お前の日常を必ず取り戻す。だから、俺を信じて」
 
 資料庫で、信用出来ないとあれだけ言ったせいなのか、泣きそうな顔で笑う早瀬に、あたしはただ自然と……こくりと頷いていた。

 頭より先に、あたしの心がそう望んだんだ。

「ありがとうな」

 自分でもわからないけれど、早瀬の顔を見たら安心した。

 早瀬の声は不思議な力を持っている。
 早瀬が傍にいるのなら、あたしはこの先なにがあっても大丈夫だとそう、思えてしまうんだ。なんの根拠もないはずなのに。

 また、会えてよかった。
 また、その声を聞けてよかった。

 早瀬と離れる事態にならなくてよかったと、早瀬の胸に抱きつくようにして顔を隠しながら、また密やかに涙を零した。

 早瀬を信じたい、だけど信じられない。

 その思いが今はなぜか、

 信じられなくても信じたい――それに変わった。

 あたしはこの王様に、縋りたいんだ。

 助けてって。

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