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エリュシオンでささやいて
第2章 Lost Voice
 

「ボーカルが普通の十二平均律で歌うと、楽器の音にも歪みを出す。不協和音にしかならねぇ」

 十二平均律というのは、現代音楽の音律の標準となっているもので、ピアノの調律もこれに倣っている、1オクターブを12の半音に等分する方法。移調や転調はしやすいけれど、和音となるとどうしても歪みが出てしまう。

 現代音楽は、電子ピアノであるシンセサイザーや、ギターの音質を変えるイコライザなど、楽器の音を機械で自由に歪ませることが出来るため、それをわざと歪ませることで効果的に楽曲に用いたりする。

 ジャズでよく使う和音のセブンスコードと呼ばれるものも(たとえばCはドミソ、C7はドミソシ♭になる)、わざと不協和音にも思えるような音を付け加えることで、逆に格好よく演出しているものが多いんだ。

「だとしたら、あなたが作っているのは平均律以外の曲で、それを歌えるボーカルを探しているということですか?」

「そうだ、HADESは純正律の曲を歌わせる。さすがにお前なら話が早いな。というか、その言葉遣い直せ」

 彼の言葉を、軽く聞き流す。

 平均律に対し、移調や転調が出来ない音律を純正律といい、グレゴリオ聖歌が代表される。

 音とは周波数であり、和音という複数の周波数の組み合わせが歪んで聞こえるのが、平均律だ。

 今思えば、あの天使の歌声も、純正律だったように思える。

 十二平均律の音楽が溢れている中で、純正律で歌えるのは凄いことだ。純正律はどの音律なのかと、それをわかっていなければならないから。

 つまり純正律の曲を聴いても、あのデモの男性陣は純正律で歌えなかった、ということになるのだろう。耳から流れる音で歌えなかった、と。

「まさかあたしに、純正律の音楽を歌える声を探せと言うんですか?」

「ああ。純正律は後の訓練でもなんとかなる。だから俺の曲調に柔軟に対応出来る奴を見つけ出せ。どんな曲でもこなせる奴を」

「簡単に……」

「お前の耳は純正律を聞き分ける力と、絶対音感がある。お前、あのデモの曲をすべてパート分けして楽譜に書けといったら、出来るだろ?」

「あれくらいなら」

「それが、絶対音感の持ち主だ。あのデモは、デビュー曲ではないが、純正律で作ったもの。デモに、お前がOK出さなかったのは、プロジェクトを知らずとも、俺が求める歌声ではないと悟ったんだろう?」

 
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