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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「何枚だ?」
「ええと、姉貴が三枚、妹が二枚。でお袋とババと。全部で七枚」
「はああああ!?」
「仕方がないだろ、俺んち凄く女が多いんだから。全員が全員、あんたのファンらしいよ。後で皆が口を揃えてた。あいつら、恋愛以外の話を今までしたことがなかったから。血は争えないよな」
「七枚も……」
早瀬、自棄気味に缶ビールを呷った。
縁とは不思議なものだ。
一週間前には、こうして歓談することも想像すらしていなかった人達。
早瀬は小林さんの電話番号は会社用に登録してあるみたいだけれど、こうして外から見ていると、ふたりは仲がいいと思う。
この仲で会社用なら、プライベート用に登録されている……顔がわからない棗くんはどれだけ仲良しさんなんだろう。
談笑に包まれた顔合わせと挨拶、迷惑をかける侘びと、団結を誓う宴が一通り過ぎた頃、早瀬は皆を見渡して言った。
「銃で襲われたという話を、もう一度聞いてもいいか?」
早瀬なりに、あの時のショックを急にぶり返さないようにと、気を遣って宴会に興じていたのか。
だけど皆、いずれはその話になることがわかっていたみたいで、特に誰も不満な態度をする者はいなかった。
皆が感じたことを、口々に早瀬に言うが、前に話したものと同じで、目新しい情報を教えることはなかった。
「朝霞がどの程度関与しているのか、だな。銃を持って拉致しようとした男と繋がっているのか、それとも薬物を入れたと思われる店員と繋がっているのか。三者は同じ目的なのか、別々なものなのか」
そして早瀬はスマホで電話をかけ始めた。
「駄目だ。やはり繋がらねぇな。電源切ってる。さっきもかけてみたんだが」
朝霞さん、大丈夫なんだろうか。
実はあたしも、朝霞さんにLINEで大丈夫かと入れてみたのだけれど、既読にならない。
「それだけ大捕物劇となっていたのなら、ニュースになってるのかな」
腕組をした小林さんが言った。
「車でここに来るまでの間、ラジオをつけていたが、そんな放送はなかったがな」