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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 

「俺、Instagramやfacebook、Twitterとか色々見てみる。もしかしたらSNS拡散しているかもしれないし」

 現代っ子はSNSに精通しているらしい。

 早瀬はリモコンで、彼の背後に鎮座している……聞けば72インチとか言う王様専用としか思えないテレビをつけた。

「ネットも見れるから、動画とか調べてみるか」

「私、スマホのネットニュース見てみます! 柚もお願い」

「了解」

「俺は、コンビニ寄った時に買ったスポーツ新聞でも……」

 それぞれが、木場で起きた……どう考えても日常とは思えない、物騒な事件を扱っているものはなかった。

「なんでないのかしら。あんなに派手に騒いでいたのに」

 喫茶店の窓硝子を銃で割って、その後も何度か発砲した。
 外には怪しい黒いボックスカーがあって、どう見ても普通とは思えない黒服達が、皆の前であたし達を拉致しようと、揉み合った。

 ……それが、話題になっていないのは、なぜ?

「情報規制が出ているかもしれねぇな」

 早瀬が、テレビを消して言う。

「え、どこから?」

 裕貴くんが驚いた声を出すと、早瀬は難しい顔をして言った。

「情報網を統制出来る地位にある者だ。お前達が会っていない第三者かの力か、もしかすると……朝霞が残ったのに意味があるのかもしれない」

「意味?」

「後処理を、奴がしたという意味だ。そうであるのなら、朝霞は確実にこういう事態を把握して動いていたことになる。そしてもみ消せるだけの力があるということだ」

「そういえば柚が、朝霞が店に現われたタイミングのこと言ってたよね」

「うん。あの喫茶店は二年前に出来ていたのに、なんであたしが初めて立ち寄ろうとした時に、朝霞さんも青山から来ていたのか、って」

 裕貴くんが女帝を向いた。

「柚達の会社で、俺達がケーキ屋に行こうと話していた時に、三芳サンと仲良くしていたひと達も聞いていたんだって。朝霞と繋がっているような人物だと思う?」

「確かあの時聞いていたのは、美保と牧田と道下はいたわね。あの三人は、朝霞と繋がりがあるようには思えないわね。つまりエリュシオンでスパイをしているということでしょう? そんな度胸がないし、すぐ顔に出るのよ」

 確かに赤くなったり青くなったり忙しい人達ではあった。
 
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