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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「可能性的には、美保かもしれないわね。あの子妙に、無感情に話す時があるから。いつもは頭悪そうなふりをしているけれど、本当に頭が悪いのかわからないことがある」
「でも彼女は、オリンピアをあまりよく言ってなかったわ」
「柚、わざとかもよ? 柚は朝霞と知り合いだから、スパイだってばれたくなかったから、とかは?」
裕貴くんの言葉に、あたしは首を傾げた。
「可能性はあるけれど、断言は出来ないよ」
「須王、お前の考えは?」
「銃と薬物は別物だと俺は思う」
「根拠は?」
「朝霞だ」
早瀬が言う。
「朝霞が画策したのなら、なにも今日ではなく月曜でもいいはずだ。奴の動きが雑すぎるんだ。焦っているというのか。二度も俺を使ったくせに、今回は自分で乗り出してきた。……恐らく上原が狙われていることを知ったんだと思う」
「どうやってさ!」
「朝霞が俺を使わねぇってことは、今日は俺が上原の傍にいねぇことを朝霞は知っていたから、奴が出てきたんだろう。そう考えれば、エリュシオンに朝霞に繋がるスパイはいるんだろう。俺が傍にいなくても、上原がまっすぐ家に帰る可能性もあったのに、朝霞は喫茶店にきたのだから、そのスパイはお前達が喫茶店に行くことを知り、朝霞に話した。もしくは、盗聴器が仕掛けられていたか」
「一階の受付のところで話しましたよね、私柚と裕貴と。だとしたらやはり受付の机らへんか美保が怪しいということか」
「それが朝霞に繋がる一点。もし朝霞が上原を守りに来ていたとするのなら、なぜ黒服はお前らが店にいるとわかったのかが問題になる。或いは店員の方を朝霞が警戒していたとしても、そうだ。なぜ奴らは知り得たのか」
「二重スパイ?」
女帝の声に、早瀬は目を細めた。