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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「実は敵の手先で、交換したふりをして、盗聴器みたいのをつけたとか。だから、喫茶店に行くこともばれてしまった、とかは?」
あたしは頭を横に振った。
「あたしのパソコン、鹿沼さんが責任もってみてくれたの。あのふたりは凄く親身になってくれて、怪しいところはないわ」
――喝を入れますね。
励ましてくれた鹿沼さんが悪いひとなわけはない。
「お前のパソコン、その鹿沼っていうのが診たのか?」
「いいえ。鹿沼さんは主任なんですが、その上の課長さんというひとが診てくれたそうです」
「名前は?」
「香月さんです」
途端に早瀬は眉根を寄せた。
「どんな奴だ?」
「理知的なイケメンでした。とても若い気がしましたが」
「ああ、私、前にみかけたことがあるわ、シークレットムーンの香月朱羽さんでしょう? 黒髪と眼鏡の」
「そう。名前まではわからないけど」
「ちょっと見た目、冷たい感じがするインテリ系の」
「そうそう。営業用の笑顔で見送られたけれど、凄くクールな感じ」
「それ、間違いなく香月課長だわ。ちょっと前にシークレットムーンに課長として赴任してきて、凄くパソコンが出来るひとみたいよ。なんでもアメリカの大学を出て、忍月コーポレーションにいたという噂だったけれど」
「忍月コーポレーション!?」
早瀬が動揺している気がする。
なぜだろう。
ただ、ビルの上にある会社ではなく、個人的になにかあるのだろうか。