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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 

「はい。私達がエリュシオンに来た時には、香月さんは忍月コーポレーションに居て、それでちょっと前に、シークレットムーンに課長で来たと、聞きました」

 早瀬は突如仰け反り、伸びをようにして、天井を見上げている。

 途方に暮れたかのようで、なにか怒りを含んでいるようで。

 そしてため息をついて上体を正すと、言った。

「そいつが上原のパソコンを直したのなら、なにもなされてねぇ。スパイでもねぇよ」

「知ってるんですか? 香月さん」

「知らねぇよ!!」

「でも身元保証しましたよね?」

「知らねぇって言ってるだろう!?」

 ……知ってるんだ。

 まあ、忍月コーポレーションの宮坂専務と知り合いであるのなら、その忍月コーポレーションにいたという香月課長を間接的にでも知っていたのかもしれないし。

 忍月コーポレーションが嫌いなのかしら?

 ああ、宮坂専務と、香月課長と、早瀬を横に並べて眺めてみたい。
 この三人が並ぶのなら、思いきりミーハー気分になってみたい。

 あたしは早瀬が傍に居るから、どうしても早瀬を贔屓目になってしまうけれど、だったら直属の部下である鹿沼さんはどう言うのだろう。

 香月さん推しか。
 早瀬推しか。
 それとも、宮坂専務推しか。

 思わずにやにやしてしまったら、皆に気味悪がれてしまった。

 いけない、いけない。

 平常心、平常心。

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