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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「ああ、あのクソ親父を散々に滾々と説教したわよ。身の程知らずのハイエナ野郎って」
「そ、そう……」
「あいつ、早瀬さんを目の敵にしているみたいね。それまでは媚びて媚びて、誰も頼んでもいないのにHADESプロジェクトのスポンサー引き受けて。で、嫌となったらスポンサー降りて違約金とか言いだしているでしょう? 私情で仕事を放棄するような男は、私大っ嫌いなの。仕事なら、完璧にしてみろと怒鳴ったわ」
女帝は仕事に対する姿勢はきちんとしているらしい。
「でもなにかぶちぶち言うから、娘が関わっている仕事も私怨で放棄するのなら、縁を切る!と言ったら、泣き出してさ。とりあえず違約金は撤回させたけど、スポンサーのところはもう少し時間と私の説教が必要ね」
「こりゃあいい助っ人だな、須王」
「ああ」
笑い出す小林さんと早瀬。
「姐さん……」
その中で、裕貴くんが目をうるうるとさせた。
「俺、スカッとしたよ。女帝より……もっと身近な、姐さんと呼ばせて」
「なによ、それ」
「姐さん、ありがとう! 須王さんと姐さんがいたら、俺……あの親子に打ち勝てる気がしてくる」
「私も子供なんだけど」
「いや、姐さんは姐さんだよ。男が逃げるのもよくわかる!」
「あ゛!?」
絶えない笑い。
あたしもこの明るく楽しい空間に呼んで貰えて、とても幸せで嬉しくて、潜在意識に刻み込まれた恐怖も薄れていく気がした。
そうか、あたしはひとりじゃないから、恐怖や不安が克服出来るんだ。
……あたしは、ひとりじゃない。