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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 

「まあ、悪い奴じゃないんで、よろしく頼む」

 早瀬のプライベートの電話のアドレス帳に、唯一載っていたお友達。

 白城棗くん、ねぇ。
 
 早瀬がつるんでいたのなら、イケメンなのかな。
 騒がれていたんだろうな。

 音楽室以外の早瀬に興味がなかったと言えばそうだ。
 かなり早瀬はモテていたから、別世界に住むひとのように思っていたから。

 音楽以外の早瀬の趣向も、家族構成も、友達もまったく知らない。

「それと上原、お前は俺と行動だから。ちょっと色々回りたいところがある」

「え、奈緒さんと……」

「今日のことで警戒して、多勢で襲われたら、今度は三芳の手に負えるかわからねぇんだよ。小林、裕貴。三芳と行動しろ」

「了解! 多分そうなると俺、思ってたし」

「ぶはははは。役得だな、須王」

「うるせぇ!」

「……あの、あたしも三人と同じ行動を……」

「駄目だ」

「ぶはははははは! 嫌われてやがんの!」

「その不器用なところ直して、さっさと言っちゃった方がいいよ?」

「だ、黙れ!」

「……柚。このお屋敷の外では須王さんと行動してても、屋敷の中では私と一緒に寝ようね!」

「三芳、そのにやにや顔はなんなんだよ!」

「あはははは、私こっちの方が楽しいわ! そんな顔を見れるとは!」

「須王さん、姐さんにもからかわれてやがんの!」

「がははははは」

 ……一体、なにが理由でこんなにわいわいとしているのだろう。
 三人がなぜか早瀬を揶揄して、早瀬が参っているような図。

 え、あたしだけがわからないの?

「ええと……皆さん。どこに笑う要素がありました?」

 そう言うと、笑う声がぴたりととまり、皆の目があたしに向き、残念な子を見るような眼差しから、可哀想な子を見るような眼差しとなって、早瀬の方に向いた。

「須王さん。どんまい?」

 代表した裕貴くんの哀れんだ声が、やけに耳に残った。

 
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