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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 

「嫌?」

「い、嫌じゃない、です、多分……はい、恐らくは」

「ぶはっ。なんだよ、その返し」

 動揺を笑われてしまった。

 月の引力は不思議な魔力があるというけれど、どこか翳ってみえる早瀬の美しさを際立たせているようで。

「お前も飲んだんだろ? 暗いし、足元危ないから」

 伸びた手が、あたしの手を取り、指を絡ませ合うようにして握られて、そのまま静かに歩いた。

 ……多分あたしも酔っているのだろう。
 ほわほわと、雲の上を歩いているような浮遊感があるから。

 それでも早瀬の手を離したくなくて、早瀬を感じていたくて。
 無性に切なくなって。

 それをまぎらわせるようにして、とりとめのない話題を探す。

「……タバコ、吸うんですね」

「言葉遣い」

「す、吸うんだね」

「ん……。忘れたいことを思い出した時にはな。いつもは吸わねぇけど」

 酔っているのか、その声が気怠そうで色っぽい。

「俺とお前の、秘密な?」

 睦言のように言われて、ドキドキが強くなってしまった。

「あそこに、座ろうか」

 案内された内庭に、石造りのベンチがあった。
 ちょうど、オレンジ色の照明の光に照らされる。

 そこに早瀬に促されて座ると、冷気にくしゃみをしてしまった。

「寒い?」

「いえ、……くちゅん」

「もっと近くに寄れよ。俺は酒で暑いから」

「だ、大丈夫……くちゅん」

「大丈夫じゃねぇだろ?」

 早瀬の片手があたしの脇に回り、ぐいと引き寄せられ、彼の肩に頭をつけられた。

 ベリームスクの匂いが強くなる――。

 服越しだと言うのに、早瀬の熱い体温を感じ、抱かれていることを思い出してしまったあたしは、真っ赤な顔で固まってしまう。

 ああ、夜でよかったと思いながら。

 
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