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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「駄目?」
キス、したいの!
傷ついていいの?
早瀬が好きなの!
戻っておいで、そこから先は危険だから。
あたしは、早瀬が、須王が……。
早瀬の首に手を回して、立ち上がるようにしながら、あたしからキスをした。
あたしの唇は涙の味がしていただろう。
きっと早瀬は、それを感じただろう。
だけど、お願い。
傷よりも痛みよりも、早瀬が欲しいと思ったあたしを忘れないで。
傷が痛いけど、だけどやはりあたしは、あなたが好きなの。
触れあうだけの唇で精一杯のあたしは、そのまま涙を流した。
早瀬はあたしからのキスに驚いていた顔をしていたようだが、そのまま固まってしまうあたしに苦笑して、唇を少し離して、啄むようにキスをした。
「だからなんで泣く?」
「……っ」
「俺が嫌いなのに、キスはいいのか?」
「………」
「でもこんなのはキスって言わないぞ? 教えただろう? 本当のキス」
「ふ……ぇ」
憎らしいほど、早瀬が好き。
恨めしいくらいに、早瀬が好き。
あたしは泣きながら早瀬のネクタイを思いきり引くと、下がってきた早瀬の唇に噛みつくような……やけくそのキスをした。
ふっ……と笑ったような気配がする。
そして唇が重なったまま、あたしの身体は早瀬の両手で持ち上げられ、早瀬の膝の上に真向かいに座らせられると、上から早瀬の唇を貪るような形となる。
フレヤーとはいえスカートなのに、しかも生理中なのに、こんなところで両足を開かせられて跨ぐ格好が恥ずかしくて堪らないのに、そうした羞恥心が顔か態度かに出たのか、見下ろす早瀬の顔が、嬉しそうに……だけど挑発的な眼差しをしながら、唇を薄く開いて、あたしを誘う。
もう出来ません。
これで精一杯です。