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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「辛かったね、柚。話してくれてありがとう」
まず、そう……涙目で手を握ってくれたのは女帝で。
他の女が、好きなひとに告白しようと言っているのに、善意だけで返してくれたことに、あたしも涙した。
「柚、俺……須王さんに言いつけたりしないから、心に抱えていたもの、毒として出していいからな。辛かったろうな、九年だものなあ。九年前って言ったら、俺八歳じゃん。それから今までずっと……なんてさ」
「私も言わないからね! ……正直、私も色仕掛けで早瀬さん落とそうとしたこともあったけれど、あんたの話聞いていると、性処理と宣言される身体だけの関係も辛いわね」
ふたりとも早瀬が好きなのに――。
「あのひと、そこまで拗らせているとは……。なにやってんだよ……」
裕貴くんが腕組をしてぼやけば、同調したように女帝がため息をつく。
「本当よね。あのひと、仕事なら強引にでもすんなり進めて、納期以内で仕上げてくるのに、なんで柚には九年もタラタラと……」
「柚には強引の方向性が違うというか、焦るのはわかるけど、やればやるほど墓穴掘ってるというか……順序が違うだろうって言いたい。これ、俺が高校生だからなのか?」
「いや……アラサー世代もそう思うわ。その口は、お飾りかって」
「だろう? 口が駄目なら文字ならと、LINEしたらあのひと、業務連絡みたいのばかりでさ。俺、初スタンプ買わせて、幾らかマシにさせたんだけれど、この状況で、なにが〝少しは進展したかも〟だよ、あのひと。後退してるじゃないか! 言葉の使い方が、絶対間違っているって!」
「そんなこと報告してたの、あのひと。あんた十七でしょう?」
「そうだよ。しかもその十七に〝手を出すな〟とまで言われたのに、なんで柚がここまで勇気振り絞って、元凶のあのひとに言わなきゃならないのかって思うんだよな」
「本当よね……。突き放すことも出来ないのなら、そんなことしなきゃいいのに……」
「理由はあるんだろうけどさ、柚を傷つけるというのが苛立つな」
「ホントホント! お前は、柚の泣き顔みて興奮する鬼畜か!と言いたいわ」